相続放棄の手続きを自分でやる方法|必要書類・費用・期限を完全ガイド

相続放棄の手続きを自分でやる方法|必要書類・費用・期限を完全ガイド

「親が多額の借金を残して亡くなった」「相続するより放棄したほうが得かもしれない」――そんな状況で相続放棄を検討している方は多いはずです。しかし、手続きの方法や期限がわからず、不安を感じている方も少なくありません。この記事では、相続放棄の手続きを自分でやる方法を、必要書類・費用・期限・申述書の書き方まで、初心者にもわかるよう完全ガイド形式で解説します。正確な知識を持って、確実に手続きを完了させましょう。

目次

相続放棄とは?手続き前に押さえておきたい基礎知識

相続放棄とは?手続き前に押さえておきたい基礎知識

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産・負債をすべて引き継ぐ権利を放棄する手続きです。

手続きを始める前に、相続放棄の基本的な仕組みと自分のケースに適した選択かどうかを正しく理解しておくことが重要です。

相続放棄の意味と法的効果

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、はじめから相続人でなかったものとみなされる法的手続きです。

根拠となる法律は民法第938条・第939条で、申述が受理されると以下の法的効果が生じます。

  • プラスの財産(預金・不動産など)を一切引き継げない
  • マイナスの財産(借金・保証債務など)も一切引き継がない
  • 相続開始時にさかのぼって相続人でなかったとみなされる
  • 一度受理されると原則として撤回できない

つまり、相続放棄は「いいとこどり」ができない制度です。借金だけ免れてプラスの財産は受け取る、ということはできません。

また、相続放棄をした人はその後、次の順位の相続人へ相続権が移ることにも注意が必要です。

相続放棄を検討すべき3つのケース

すべての相続で放棄が最善とは限りません。以下の3つのケースに当てはまる場合は、相続放棄を真剣に検討しましょう。

ケース1:被相続人に多額の借金・債務がある場合

最も多いケースです。被相続人が消費者金融や銀行ローン、連帯保証債務などを抱えていた場合、相続すると相続人がその返済義務を負います。借金総額がプラスの財産を上回るときは、相続放棄が有力な選択肢です。

ケース2:相続争いに巻き込まれたくない場合

遺産分割協議で親族間の紛争が予想される場合や、そもそも相続に関わりたくない場合にも相続放棄は有効です。相続放棄により最初から相続人でなくなるため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

ケース3:相続財産が不明確でリスクが高い場合

被相続人の財産や負債の全貌が把握できていない場合、予想外の債務が発覚するリスクがあります。このような場合は相続放棄または限定承認を検討しましょう。

相続放棄・限定承認・単純承認の違い【比較表】

相続には3つの選択肢があります。それぞれの特徴を以下の比較表で確認してください。

選択肢 内容 プラス財産 マイナス財産 手続き 期限
単純承認 すべての財産・負債を引き継ぐ 受け取れる 引き継ぐ 不要(自動適用) 3ヶ月以内に放棄・限定承認しなければ自動的に単純承認
限定承認 プラスの範囲内でのみ負債を引き継ぐ 受け取れる プラス財産の範囲内のみ 家庭裁判所へ申述(相続人全員で行う必要あり) 3ヶ月以内
相続放棄 財産・負債を一切引き継がない 受け取れない 引き継がない 家庭裁判所へ申述(各自単独で可) 3ヶ月以内

限定承認は相続人全員で手続きする必要があるため、現実的には相続放棄か単純承認のどちらかを選ぶケースがほとんどです。

相続放棄の手続きには期限がある|3ヶ月ルールと起算点

相続放棄の手続きには期限がある|3ヶ月ルールと起算点

相続放棄には厳格な期限があります。「知った日から3ヶ月以内」という期限を守れなければ、原則として相続放棄ができなくなります。

この期限を「熟慮期間」と呼び、民法第915条に規定されています。

熟慮期間3ヶ月はいつからカウントされる?

熟慮期間の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。

具体的には以下のようにカウントされます。

  • 配偶者・子(第1順位):被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から3ヶ月
  • 親(第2順位):第1順位の相続人全員が相続放棄をし、自分に相続権が移ったことを知った日の翌日から3ヶ月
  • 兄弟姉妹(第3順位):第1・第2順位の相続人全員が相続放棄をし、自分に相続権が移ったことを知った日の翌日から3ヶ月

重要なのは、亡くなった日ではなく「知った日」が起算点という点です。被相続人と疎遠だった場合、死亡から数ヶ月後に相続権を知ることもあり、その場合は知った日から3ヶ月がカウントされます。

また、死亡は知っていても被相続人に借金があることを知らなかった場合、判例上、借金を知った時点から熟慮期間が始まるとされるケースもあります。

期限に間に合わない場合の対処法【熟慮期間の伸長申立て】

3ヶ月の期限が迫っていても諦める必要はありません。「熟慮期間の伸長(延長)申立て」という救済手続きがあります。

根拠は民法第915条第1項ただし書きで、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が熟慮期間を伸長できます。

申立て方法の概要:

  1. 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立て
  2. 申立書・収入印紙800円・戸籍謄本等を提出
  3. 裁判所が期間延長を認める審判を行う

伸長が認められれば数ヶ月単位で期間が延長されます。ただし、必ず3ヶ月の期限が切れる前に申立てを行うことが絶対条件です。期限が過ぎてからでは申立てできません。

相続放棄の手続きにかかる費用|自分でやれば約3,000円

相続放棄の手続きにかかる費用|自分でやれば約3,000円

相続放棄の手続きは、自分で行えばトータル約2,000〜5,000円程度の実費で完了できます。

専門家(司法書士・弁護士)に依頼した場合と比較すると大幅にコストを抑えられます。

費用内訳一覧【収入印紙・切手・戸籍取得費】

費用項目 金額の目安 備考
収入印紙(申述手数料) 800円 相続放棄申述書1件につき800円。家庭裁判所窓口や郵便局で購入
郵便切手(裁判所への連絡用) 500〜1,000円程度 裁判所により必要な切手の種類・枚数が異なる。事前に管轄裁判所に確認
戸籍謄本(全部事項証明書) 1通450円 市区町村役場で取得。マイナンバーカードがあればコンビニ交付も可(手数料は自治体により異なる。例:300〜450円程度)
除籍謄本・改製原戸籍 1通750円 必要枚数は続柄により異なる(親・兄弟の場合は複数枚必要なことも)
住民票の除票 1通300円程度 被相続人の最後の住所確認用(裁判所によっては不要な場合も)
郵送費(郵送手続きの場合) 500〜1,000円程度 レターパックプラス580円推奨

合計すると、自分で手続きした場合の実費は概ね2,000〜5,000円です。続柄によって取得すべき戸籍の枚数が変わるため、若干の幅があります。

専門家に依頼した場合の費用相場

自分での手続きに不安がある場合や時間がない場合、司法書士または弁護士に依頼することができます。

依頼先 費用相場 特徴
司法書士 1人あたり3万〜7万円程度 書類作成・申述サポートが中心。費用対効果が高い
弁護士 1人あたり5万〜15万円程度 債権者対応・複雑な案件に対応可能。費用は高め

相続人が複数いる場合は人数分の費用が発生することが多いため、家族全員で放棄する場合は合計費用が高額になることもあります。

「時間がある」「単純なケース」であれば自分で行うことを強くおすすめします。

相続放棄の手続きに必要な書類|続柄別チェックリスト

相続放棄の手続きに必要な書類|続柄別チェックリスト

相続放棄の手続きで必要な書類は、申述人と被相続人の続柄によって異なります。漏れがあると手続きが遅れるため、チェックリストで確認しましょう。

全員共通で必要な書類一覧

続柄に関わらず、すべての申述人が共通して提出が必要な書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書(裁判所所定の書式、または自作)
  • 収入印紙800円(申述書に貼付)
  • 郵便切手(管轄裁判所の指定額)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票(最後の住所確認用)
  • 申述人(放棄する人)の戸籍謄本(現在のもの)

戸籍謄本は発行から3ヶ月以内のものが求められる場合が多いため、なるべく直近に取得しましょう。

【配偶者・子の場合】追加で必要な書類

配偶者や子(第1順位の相続人)が相続放棄する場合に必要な追加書類です。

続柄 追加で必要な書類
配偶者 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本または死亡記載のある戸籍謄本)
子(実子) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
子(養子) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+縁組を証明する戸籍謄本
代襲相続人(孫) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+本来の相続人(子)の死亡が記載された戸籍謄本

配偶者は常に相続人となるため、特別な追加書類は少なく手続きが比較的シンプルです。

【親・兄弟姉妹の場合】追加で必要な書類

親(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)が相続放棄する場合、先順位の相続人全員が相続放棄したことを証明する書類が追加で必要になります。

続柄 追加で必要な書類
親(父・母) 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+被相続人の子全員が相続放棄したことを示す書類(相続放棄申述受理証明書など)または子がいないことを示す戸籍謄本
兄弟姉妹 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本+被相続人の子・親全員の相続放棄証明書または相続権がないことを示す戸籍謄本一式
代襲相続人(甥・姪) 兄弟姉妹の死亡が記載された戸籍謄本を追加

親・兄弟姉妹の場合は取得すべき戸籍の枚数が多く、書類収集に時間がかかります。早めに動き出すことが重要です。

相続放棄の手続きの流れ|5ステップで完了まで解説

相続放棄の手続きの流れ|5ステップで完了まで解説

相続放棄の手続きは大きく5つのステップで完了します。全体の流れを把握した上で、一つひとつ確実に進めましょう。

ステップ1|必要書類を収集する(目安1〜2週間)

最初のステップは書類収集です。戸籍謄本の取得には1〜2週間かかることを念頭に置き、早めに動き出しましょう。

取得先と方法:

  • 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍:本籍地の市区町村役場窓口または郵送請求。マイナンバーカードがあればコンビニ交付も可能(一部の書類を除く)
  • 住民票の除票:被相続人の最終住所地の市区町村役場で取得
  • 収入印紙:郵便局・法務局・コンビニなどで購入
  • 郵便切手:管轄家庭裁判所に必要額を確認後、郵便局で購入

本籍地が遠方にある場合は郵送請求が便利です。郵送請求の場合は往復1〜2週間かかることもあるため、早めに対応しましょう。

ステップ2|相続放棄申述書を作成する

書類が揃ったら、相続放棄申述書を作成します。申述書は裁判所公式サイトからダウンロードできます。

記入時のポイント:

  • 黒ボールペンまたはインク(消えないもの)で記入
  • 申述人本人が署名・押印(認印可)
  • 被相続人との続柄、放棄の理由(借金が多い等)を正確に記載
  • 未成年の場合は親権者が法定代理人として記入

申述書に収入印紙800円を所定の欄に貼付し、捺印します。

ステップ3|管轄の家庭裁判所へ提出する

申述書と必要書類を、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ提出します。

管轄裁判所は裁判所公式サイトの管轄裁判所検索で調べることができます。

提出方法:

  • 窓口提出:直接持参。その場で書類の不備を確認してもらえる
  • 郵送提出:レターパックプラス(追跡可能)推奨。詳細は後述

提出先を間違えると手続きが無効になるため、管轄裁判所の確認は必須です。

ステップ4|照会書に回答する

申述書を提出すると、裁判所から「照会書(回答書)」が郵送されてきます。これは申述の意思を確認するためのものです。

照会書が届いたら、指定された期限内(通常1〜2週間程度)に返送しなければなりません。返送を忘れると手続きが進まないため注意しましょう。

照会書の主な確認事項:

  • 相続放棄の意思が本人のものであるか
  • 相続開始を知った日(起算日)はいつか
  • 被相続人の財産・負債の状況を把握しているか
  • 遺産に手をつけていないか

すべての質問に正直かつ正確に回答してください。虚偽の回答は申述が受理されない原因になります。

ステップ5|受理通知書を受け取り手続き完了

照会書への回答後、裁判所が内容を確認し問題がなければ「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきます。

受理通知書が届いた時点で、相続放棄の手続きは完了です。申述から受理まで通常1〜2週間程度かかります。

受理後に行うこと:

  • 受理通知書は大切に保管する(紛失した場合は裁判所で「相続放棄申述受理証明書」を再発行申請可能。手数料150円/通)
  • 債権者(金融機関など)から督促が来ている場合は、受理通知書のコピーを送付して放棄を通知する
  • 次順位の相続人に放棄した旨を連絡する

相続放棄申述書の書き方【記入例・見本付き】

相続放棄申述書の書き方【記入例・見本付き】

相続放棄申述書は書式が定まっており、正確に記入することで受理率が高まります。記入例を参考に、間違いなく作成しましょう。

申述書のダウンロード方法と入手先

相続放棄申述書は以下の方法で入手できます。

未成年者が申述する場合は「相続放棄申述書(未成年者)」の書式を使用してください。

記入項目ごとの書き方を解説【見本あり】

申述書の主な記入項目と書き方の注意点を解説します。

記入項目 書き方のポイント
申述人の氏名・住所・生年月日 住民票と一致する正確な住所・氏名を記入。フリガナも忘れずに
被相続人との続柄 「子」「配偶者」「父」「兄」など、正確な続柄を記入
被相続人の氏名・本籍・最後の住所 戸籍謄本・住民票除票と完全一致させること
相続開始を知った年月日 被相続人の死亡を知った日(正確な日付)を記入。月日不明の場合は概算でも可だが、できるだけ正確に
放棄の理由 選択肢から選ぶ形式。「被相続人の債務超過」「生活が安定しているから」など該当するものにチェック
相続財産の概略 プラス・マイナス両方の財産をわかる範囲で記入。「不明」でも構わない

日付は元号でも西暦でも構いませんが、裁判所によって統一を求められることもあるため、どちらかに統一して記入することをおすすめします。

よくある記入ミスと訂正方法

申述書でよくある記入ミスと対処法を確認しておきましょう。

  • 誤字・訂正の方法:二重線を引いて押印し、余白に正しい文字を記入。修正液・修正テープは使用不可
  • 住所が住民票と異なる:必ず住民票の住所を記入。引越し直後の場合は住民票を移してから取得を
  • 署名・押印漏れ:申述人本人の署名と認印が必要。シャチハタは不可とされる場合あり
  • 続柄の誤記:「子」と「養子」、「兄」と「弟」などの区別を正確に
  • 収入印紙の貼り忘れ:申述書の所定欄に800円の収入印紙を貼付

不安な場合は裁判所に持参して確認してもらうと確実です。

相続放棄の手続きを郵送で行う方法

相続放棄の手続きを郵送で行う方法

管轄の家庭裁判所が遠方にある場合や、忙しくて窓口に行けない場合は、郵送で手続きを行うことができます。

郵送手続きの流れと必要なもの

郵送で手続きする場合の流れは以下の通りです。

  1. 管轄の家庭裁判所に電話で郵送手続きの確認をする(必要な切手の種類・金額を確認)
  2. 申述書・必要書類一式を準備する
  3. 書類をレターパックプラスまたは簡易書留に入れる
  4. 管轄家庭裁判所(家事部・家事係)宛てに送付する
  5. 裁判所から照会書が郵送されてくるので、期限内に返送する
  6. 受理通知書が届いて完了

送付先は「○○家庭裁判所 家事部(または家事係)御中」と記載します。

郵送時の注意点【レターパック推奨】

郵送手続きでは以下の点に注意してください。

  • レターパックプラス(600円)推奨:追跡番号があり、配達確認が可能。重要書類の紛失リスクを軽減できる
  • 普通郵便は避ける:紛失・遅延リスクがあり、期限ギリギリの場合は特に危険
  • 原本を送付する:戸籍謄本等は原本を送付(コピー不可)。返却を希望する場合は返信用封筒を同封し申し出る
  • 期限に余裕を持って送る:3ヶ月の期限が迫っている場合は、早急に速達またはレターパックで送付
  • 書類漏れのないようチェックリストで確認してから封入する

裁判所によって郵送時の要件が若干異なる場合があるため、事前に電話で確認することを強くおすすめします

相続放棄の手続きで失敗しないための7つの注意点

相続放棄の手続きで失敗しないための7つの注意点

相続放棄は知らずにやってしまうミスが非常に多い手続きです。以下の7つの注意点を必ず押さえておきましょう。

遺産に手をつけると単純承認とみなされる

相続放棄の手続き前(または手続き中)に遺産を使用・処分した場合、「法定単純承認」とみなされ、以後の相続放棄が認められなくなります(民法第921条)。

単純承認とみなされる行為の例:

  • 被相続人の預金を引き出して使用する
  • 不動産を売却・名義変更する
  • 借金を相続財産で返済する
  • 遺産分割協議に参加して合意する

葬儀費用への使用については判例上グレーゾーンがあります。不安な場合は専門家に相談してください。

相続放棄は一度受理されると撤回できない

相続放棄が受理された後は、原則として撤回することができません(民法第919条)。

「やっぱり遺産を受け取りたい」と後から思っても、取り消すことは基本的に不可能です。詐欺・強迫・錯誤などの特別な事情がある場合のみ、家庭裁判所への取消申立てが認められることがありますが、ハードルは非常に高いです。

申述前に財産・負債の調査を十分に行い、本当に放棄すべきか慎重に判断することが重要です。

次順位の相続人への連絡を忘れずに

相続放棄をすると相続権が次順位の相続人へ移ります。例えば子が全員放棄した場合、親(または祖父母)に相続権が移ります。

次順位の相続人が「自分に相続権が移った」ことを知らないまま放置すると、その人も3ヶ月の熟慮期間を経過して単純承認とみなされるリスクがあります。

相続放棄が受理されたら、速やかに次順位の相続人に連絡し、必要に応じて受理証明書のコピーを渡しましょう。

生命保険金・遺族年金は放棄しても受け取れる

相続放棄をしても、以下の給付は受け取ることができます。

  • 生命保険の死亡保険金:受取人が指定されていれば相続財産ではなく受取人固有の財産のため、相続放棄後も受け取り可能
  • 遺族年金:国民年金・厚生年金の遺族給付は相続財産ではなく社会保険上の権利であるため受け取り可能
  • 死亡退職金:受取人が会社規定で特定されている場合は受け取り可能なケースが多い

ただし、受取人が「相続人」と指定されている場合は取り扱いが異なることがあります。個別のケースは専門家に確認してください。

債権者への通知で督促を止める方法

被相続人の債権者(金融機関・消費者金融など)から督促が来ている場合、相続放棄受理後に「相続放棄申述受理証明書」のコピーを郵送することで督促を停止させることができます。

受理証明書は家庭裁判所で1通150円で発行してもらえます。

督促が続く場合は「相続放棄をしており返済義務がないことを確認した」旨の内容証明郵便を送付することも有効です。

相続放棄しても管理義務が残るケースがある

民法改正(2023年4月施行)により、相続放棄をした場合でも相続財産の管理義務が残るケースが明確化されました。

具体的には、相続放棄時に相続財産を現に占有している(例:被相続人と同居していた)場合、他の相続人または相続財産清算人が管理を開始するまでの間、自己の財産と同一の注意をもって管理する義務があります(改正後民法第940条)。

特に不動産(空き家など)を管理している場合は注意が必要です。

戸籍には相続放棄の記載はされない

「相続放棄をすると戸籍に記録されるのでは?」という不安を持つ方がいますが、相続放棄の事実は戸籍に記載されません

相続放棄の記録は家庭裁判所に保管されており、関係者が「相続放棄申述受理証明書」を申請することで確認できます。

プライバシーの観点では、第三者が戸籍を見ても相続放棄の事実はわからないため、安心してください。

相続放棄の手続きを専門家に依頼すべき3つのケース

相続放棄の手続きを専門家に依頼すべき3つのケース

自分での手続きが基本ですが、以下のケースでは専門家(司法書士・弁護士)への依頼を検討すべきです。

期限まで2週間を切っている場合

熟慮期間の残りが2週間を切っている場合、書類収集・申述書作成・提出・照会書回答というすべてのプロセスを自力でこなすのは難しくなります。

専門家に依頼すれば書類収集の代行・申述書作成の迅速化が可能です。また、期限延長の申立て(熟慮期間伸長)も同時に行ってもらえます。

期限が迫っている場合は即日相談・即日着手が可能な司法書士・弁護士を探すことが重要です。

相続人が多数・関係が複雑な場合

相続人が10人以上いる場合や、被相続人に婚外子・養子がいる場合など、関係が複雑なケースは書類収集や手続き管理が困難です。

また、相続放棄した後の次順位相続人への連絡・調整など、コミュニケーション面でのトラブルを防ぐためにも専門家の関与が有効です。

債権者から督促が来ている場合

被相続人の債権者から電話や郵便で督促が来ている場合、法的な対応が必要になることがあります。

弁護士に依頼すれば受任通知(弁護士が代理人として介入する通知)を債権者に送付でき、直接の督促を停止させることが可能です。相続放棄と並行して債権者対応ができるのは弁護士の強みです。

相続放棄の手続きに関するよくある質問

相続放棄に関してよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。

Q. 相続放棄は自分一人でもできますか?

A: はい、できます。相続放棄は各相続人が単独で申述できる手続きであり、他の相続人の同意は不要です。書類を揃えて家庭裁判所に申述書を提出するだけで手続きが進みます。ただし、未成年者の場合は親権者が法定代理人として申述します。

Q. 被相続人の借金の額がわからない場合は?

A: 借金の全額が不明でも相続放棄は申請できます。申述書の「相続財産の概略」欄には判明している範囲を記載すれば問題ありません。また、信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)へ照会することで被相続人の借入状況を調査することも可能です。

Q. 相続放棄の手続きにはどのくらい時間がかかる?

A: 書類収集に1〜2週間、申述書提出から受理まで通常1〜2週間かかるため、合計3〜4週間程度を見込んでおくとよいでしょう。3ヶ月の熟慮期間内に余裕を持って手続きを完了させるには、死亡後できるだけ早く動き出すことが大切です。

Q. 一部の財産だけ放棄することはできますか?

A: いいえ、できません。相続放棄は財産・負債すべてを一括して放棄する手続きです。「不動産は放棄するが預金は受け取る」「借金だけ放棄する」といった一部放棄は認められていません。一部の財産のみ引き継ぎたい場合は、他の相続人との遺産分割協議によって特定の財産を取得しないという合意をする方法があります。

Q. 相続放棄した後に届く書類はありますか?

A: 相続放棄が受理されると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この書類は相続放棄が完了した証明となるため、大切に保管してください。また、債権者から問い合わせがあった際は、別途「相続放棄申述受理証明書」(1通150円)を裁判所で取得して提示することができます。

まとめ|相続放棄の手続きは期限内に確実に完了させよう

この記事で解説した相続放棄の手続きのポイントをまとめます。

  • 期限を最優先に確認する:相続放棄は『自己のために相続の開始があったことを知った日』から3ヶ月以内に手続きが必要。期限を過ぎると原則として放棄できない
  • 自分でやれば費用は約2,000〜5,000円:収入印紙800円・郵便切手・戸籍謄本取得費のみ。専門家に依頼した場合は3万〜15万円が相場
  • 必要書類は続柄によって異なる:全員共通の書類に加え、配偶者・子・親・兄弟姉妹それぞれで追加書類が必要。早めに揃え始めること
  • 遺産には絶対に手をつけない:放棄前に預金を引き出したり財産を処分したりすると単純承認とみなされ放棄できなくなる
  • 次順位の相続人への連絡を忘れずに:自分が放棄した後、相続権が移る親族に速やかに連絡することがトラブル防止の鍵

相続放棄は正しく手続きすれば自分でも十分に対応できます。この記事のステップに沿って、期限内に確実に手続きを完了させてください

複雑なケースや期限が迫っている場合は、早めに司法書士または弁護士に相談することをおすすめします。日本弁護士連合会の法律相談窓口日本司法書士会連合会の相談窓口を活用してください。

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