「相続税って自分には関係ない」と思っていませんか?2015年の法改正により基礎控除額が大幅に縮小され、課税対象者は約1.8倍(約8割増)に増加しました。今や相続税は一部の富裕層だけの問題ではありません。この記事では、相続税の基礎控除額の計算式から早見表・具体的な計算例まで、誰でも自分のケースに当てはめられるようにわかりやすく解説します。まずは基礎控除額を正確に把握することが、相続対策の第一歩です。
【結論】相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で算出します。
この計算式さえ覚えておけば、自分の家族構成に当てはめてすぐに基礎控除額を求めることができます。
遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税の申告・納付は原則として不要です。
基礎控除の計算式と覚え方
計算式は以下のとおりです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
覚え方のコツとしては、「さんぜんまんえん(3,000万円)がベースで、法定相続人1人につき600万円が加算される」と覚えると忘れにくいでしょう。
法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と、相続人が増えるほど非課税枠も広がります。
根拠となる法律は相続税法第15条(e-Gov法令検索)に規定されています。
【早見表】法定相続人の数別・基礎控除額一覧
自分の家族構成に合わせて、以下の早見表で基礎控除額をすぐに確認してください。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 計算式 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 3,000万円+600万円×1 |
| 2人 | 4,200万円 | 3,000万円+600万円×2 |
| 3人 | 4,800万円 | 3,000万円+600万円×3 |
| 4人 | 5,400万円 | 3,000万円+600万円×4 |
| 5人 | 6,000万円 | 3,000万円+600万円×5 |
| 6人 | 6,600万円 | 3,000万円+600万円×6 |
最も一般的な「配偶者+子2人」の家族構成(法定相続人3人)の場合、基礎控除額は4,800万円となります。
遺産総額がこの金額以下であれば、相続税は原則かかりません。
相続税の基礎控除とは?仕組みをわかりやすく解説

相続税の基礎控除とは、相続財産のうち税金がかからない非課税枠のことです。
課税遺産総額(遺産総額から基礎控除額を差し引いた額)がプラスになって初めて、相続税の計算が始まります。
基礎控除の仕組みをしっかり理解することで、相続税がかかるかどうかを正確に判断できるようになります。
基礎控除は「すべての相続に適用される非課税枠」
基礎控除は、特別な手続きや申請なしに、すべての相続に自動的に適用される非課税枠です。
適用条件は特にありません。遺産を相続した場合、誰でも必ずこの控除が認められます。
他の控除や特例(配偶者控除、小規模宅地等の特例など)は一定の要件を満たす必要がありますが、基礎控除はすべての相続人が無条件で利用できる点が大きな特徴です。
なお、相続税は個人ごとではなく相続財産全体に対して計算されるため、基礎控除額も相続人全員で共有する枠として機能します。
2015年改正で基礎控除が4割縮小|課税対象者が約2倍に
2015年1月1日以降の相続から、基礎控除額が大幅に引き下げられました。
| 改正前(2014年以前) | 改正後(2015年以降) |
|---|---|
| 5,000万円+1,000万円×法定相続人数 | 3,000万円+600万円×法定相続人数 |
例えば法定相続人が3人の場合、改正前は8,000万円だった基礎控除が、改正後は4,800万円へと約40%減少しました。
この改正により、東京など地価の高い地域では特に課税対象者が大幅に増加し、全国の相続税の課税割合は改正前の4.4%から改正後(2015年)は8.0%へと約1.8倍(約8割増)に上昇しました。
「自分には関係ない」と思っていた方も、改正後は課税対象になっている可能性があるため、一度試算しておくことが重要です。
基礎控除と配偶者控除・小規模宅地等の特例との違い
相続税には複数の控除・特例制度がありますが、それぞれ仕組みと役割が異なります。
| 制度名 | 対象者 | 内容 | 申請の要否 |
|---|---|---|---|
| 基礎控除 | 全員 | 遺産全体から一定額を控除 | 不要(自動適用) |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者のみ | 配偶者の取得分が1億6,000万円または法定相続分以下なら税額ゼロ | 申告書への記載が必要 |
| 小規模宅地等の特例 | 要件を満たす相続人 | 自宅等の土地評価額を最大80%減額 | 申告書への記載が必要 |
基礎控除は課税対象となる遺産総額そのものを減らす制度であるのに対し、配偶者控除や小規模宅地等の特例は基礎控除を適用した後の税額・評価額をさらに減らす制度です。
これらの制度は原則として併用可能であるため、該当する制度を組み合わせることで相続税の負担を大幅に軽減できる場合があります。
基礎控除の計算に必要な「法定相続人」の数え方

基礎控除額の計算で最も重要なのが、法定相続人を正確に数えることです。
実際の相続では相続放棄・養子縁組・代襲相続などさまざまな事情が絡み合うため、正確な人数の数え方を理解しておく必要があります。
基本ルール:法定相続人になるのは誰か
法定相続人とは、民法(e-Gov法令検索)で定められた相続権を持つ人のことです。
法定相続人の範囲と優先順位は以下のとおりです。
- 配偶者:常に法定相続人となる(内縁関係は対象外)
- 第1順位:子(実子・養子を含む)。子が死亡している場合は孫(代襲相続)
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)。第1順位がいない場合のみ対象
- 第3順位:兄弟姉妹。第1・第2順位がいない場合のみ対象。兄弟姉妹が死亡している場合はその子(甥・姪)が代襲相続するが、再代襲(甥・姪の子)はなし
上位順位の相続人が存在する場合、下位順位の人は法定相続人にはなれません。
ケース①:相続放棄した人がいても人数に含める
相続放棄とは、相続人が相続の権利を放棄することです。
重要なポイントは、相続放棄をした人であっても、基礎控除の計算上は法定相続人の数に含めるという点です。
例えば、子3人のうち1人が相続放棄をした場合でも、法定相続人の数は「3人」として基礎控除額を計算します。
これは相続税法上の特別なルールであり、民法上の相続放棄(相続人の地位を失う)とは扱いが異なります。
この点は誤解しやすいため、注意が必要です。
ケース②:養子には人数制限がある
養子は法律上、実子と同様に法定相続人となります。
ただし、基礎控除の計算上、養子として数えられる人数には制限があります(相続税法第15条第2項)。
- 被相続人に実子がいる場合:養子は1人までしか法定相続人の数に算入できない
- 被相続人に実子がいない場合:養子は2人まで法定相続人の数に算入できる
これは、節税目的での養子縁組の乱用を防ぐための規定です。
なお、特別養子縁組による養子・配偶者の連れ子(被相続人と養子縁組している場合)は実子として扱われ、この制限の対象外となります。
ケース③:代襲相続が発生している場合の数え方
代襲相続とは、本来の相続人(子など)が被相続人より先に死亡していた場合に、その子(孫など)が相続権を引き継ぐ制度です。
代襲相続が発生している場合、代襲相続人(孫など)を法定相続人の数に含めて基礎控除額を計算します。
例えば、子2人のうち1人がすでに死亡しており、その子(孫)2人が代襲相続する場合、法定相続人は「生存している子1人+孫2人=3人」となります。
代襲相続人が複数人いる場合でも、それぞれ1人として数えるため、基礎控除額が増加します。
【計算例】3つのケースで相続税の基礎控除を実際に計算

実際の家族構成に当てはめた計算例を3パターン紹介します。
それぞれのケースで法定相続人の数を確認し、基礎控除額を算出する手順を確認してください。
ケース①:配偶者と子2人で相続する場合
最も一般的なケースです。
- 法定相続人:配偶者1人+子2人=合計3人
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
この場合、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
仮に遺産総額が6,000万円の場合、課税遺産総額は6,000万円-4,800万円=1,200万円となり、この1,200万円に対して相続税が計算されます。
なお、配偶者が遺産の一部を相続する場合は配偶者の税額軽減も適用できるため、実際の税負担はさらに軽減されることが多いです。
ケース②:子のみ1人で相続する場合(配偶者なし)
配偶者がすでに他界しており、子が1人だけというケースです。
- 法定相続人:子1人=合計1人
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円
法定相続人が1人の場合、基礎控除額は最低水準の3,600万円となります。
遺産総額が3,600万円を超えると相続税の申告が必要になるため、相続人が少ない家庭では特に注意が必要です。
例えば、自宅(評価額2,500万円)と預貯金1,500万円がある場合、合計4,000万円となり基礎控除(3,600万円)を400万円超えるため、申告が必要となります。
ケース③:養子がいる場合の計算方法
実子1人と養子2人がいるケースで計算してみます。
- 実際の家族構成:実子1人+養子2人
- 実子がいるため、養子は1人までしか算入不可
- 法定相続人の数:実子1人+養子1人(制限適用)=合計2人
- 基礎控除額:3,000万円+600万円×2人=4,200万円
養子が2人いても、実子がいる場合は養子1人分しか基礎控除の計算に加えられません。
「養子を増やせば節税になる」と考える方もいますが、税法上の制限があるため、実際には限定的な効果しか得られない点に注意しましょう。
相続税がかかるかどうかを判定する3ステップ

相続税の申告が必要かどうかは、次の3ステップで簡単に判定できます。
まずは大まかな試算を行い、申告が必要かどうかを確認することが大切です。
ステップ①:遺産総額を概算する
相続財産には以下のものが含まれます。
- プラスの財産:現金・預貯金、不動産(土地・建物)、有価証券(株式・投資信託など)、生命保険金(非課税枠超過分)、退職手当金(非課税枠超過分)、自動車・貴金属などの動産
- マイナスの財産:借入金・ローン残高、未払い税金・医療費などの債務
なお、生命保険金と退職手当金にはそれぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。この枠を超えた部分が遺産総額に加算されます。
概算の段階では細かい評価計算は不要です。まずはおおよその金額を把握することを目標にしてください。
ステップ②:基礎控除額を計算する
家族構成を確認し、法定相続人の数を正確にカウントします。
- 配偶者の有無を確認する
- 子(実子・養子)の人数を確認する(相続放棄した人も含める)
- 子がいない場合は父母・兄弟姉妹の有無を確認する
- 代襲相続が発生していないか確認する
- 「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算する
この手順で算出した金額が、申告要否の判断基準となる基礎控除額です。
ステップ③:遺産総額と基礎控除額を比較する
ステップ①で概算した遺産総額と、ステップ②で計算した基礎控除額を比較します。
- 遺産総額 ≦ 基礎控除額:相続税の申告・納付は原則不要
- 遺産総額 > 基礎控除額:相続税の申告が必要な可能性あり(各種特例・控除の適用により納税額がゼロになる場合でも申告が必要なケースがある)
遺産総額が基礎控除額を超えた場合でも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用することで、実際の納税額がゼロになるケースも多くあります。
ただし、これらの特例を適用するためには申告書の提出が必要であるため、申告不要と早合点しないよう注意してください。
基礎控除を超えた場合に確認すべきこと

遺産総額が基礎控除を超えていることが判明した場合、次のステップとして特例・控除の適用可否を確認することが重要です。
また、自分で申告できるかどうかの判断も必要です。
適用できる特例・控除をチェックする
基礎控除を超えた場合でも、以下の特例・控除を活用することで税負担を大幅に軽減できる場合があります。
- 配偶者の税額軽減:配偶者が取得した財産が1億6,000万円または法定相続分以下であれば、相続税がかからない
- 小規模宅地等の特例:被相続人が住んでいた自宅の土地(330㎡まで)の評価額を最大80%減額できる
- 未成年者控除:法定相続人が未成年の場合、18歳になるまでの年数×10万円を税額から控除
- 障害者控除:法定相続人が障害者の場合、一定額を税額から控除(特別障害者は最大1,000万円まで)
- 相次相続控除:10年以内に2回以上相続が発生した場合に適用される控除
これらの特例・控除の多くは申告書を提出することが適用の条件となっているため、「基礎控除内で収まるかもしれない」という状況でも申告を怠らないようにしましょう。
専門家に相談すべき5つのケース
以下のような場合は、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
- 不動産が含まれる場合:土地・建物の評価(路線価・固定資産税評価額)は複雑で、評価方法により相続税額が大きく変わる
- 非上場株式が含まれる場合:評価が難しく、専門的な知識が必要
- 小規模宅地等の特例を適用したい場合:要件の確認・選択が複雑
- 遺産分割でもめている・もめそうな場合:分割協議が整わないと申告期限(10ヶ月以内)に間に合わない可能性がある
- 生前贈与・贈与税申告がある場合:相続時精算課税や暦年贈与との関係を正確に処理する必要がある
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。期限を過ぎると加算税・延滞税が課せられるため、早めに動き出すことが重要です。
自分で申告できるケースの目安
逆に、以下の条件がすべて揃っている場合は、自分で申告できる可能性があります。
- 相続財産が預貯金・現金・上場株式のみ(不動産・非上場株式なし)
- 法定相続人全員が合意して遺産分割が円満に進んでいる
- 適用する特例が配偶者の税額軽減のみ(小規模宅地等の特例は不使用)
- 生前贈与や相続時精算課税の適用がない
ただし、自分で申告する場合でも、国税庁の国税庁ホームページの記載内容をよく確認し、申告漏れや計算ミスのないよう注意してください。
相続税の基礎控除に関するよくある質問

相続税の基礎控除について、特に多く寄せられる疑問にお答えします。
Q. 基礎控除額は毎年変わりますか?
A:現行の計算式(3,000万円+600万円×法定相続人数)は2015年1月1日から適用されており、2026年現在も変更されていません。ただし、今後の税制改正で変更される可能性はあります。最新情報は国税庁ホームページでご確認ください。
Q. 生前贈与をしていた場合、基礎控除に影響しますか?
A:基礎控除額そのものは変わりません。ただし、一定の生前贈与財産(相続開始前7年以内の暦年贈与、または相続時精算課税を選択した贈与)は相続財産に加算されるため、課税遺産総額が増加し、結果的に相続税がかかる可能性が高まります。
Q. 相続放棄すると基礎控除額は減りますか?
A:減りません。相続税法上、相続放棄した人も法定相続人の数に含めて基礎控除額を計算します。例えば子3人のうち1人が放棄しても、法定相続人は3人として計算し、基礎控除額は4,800万円(配偶者含む場合)のままです。
Q. 配偶者がいない場合の基礎控除はいくらですか?
A:配偶者がいない場合は、子の人数に応じて計算します。子1人なら3,600万円、子2人なら4,200万円、子3人なら4,800万円です。配偶者はあくまで法定相続人の1人として数えるため、配偶者がいないだけで基礎控除額は600万円減少します。
まとめ|相続税の基礎控除計算は相続対策の第一歩

この記事では、相続税の基礎控除額の計算方法について解説しました。重要なポイントを整理します。
- 基礎控除の計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、すべての相続に自動適用される非課税枠
- 法定相続人の数え方には注意が必要:相続放棄者も含める、養子は実子の有無で1〜2人までの制限あり、代襲相続人はそのまま人数に算入
- 2015年の法改正で基礎控除が約40%縮小し、課税対象者が増加。自宅と預貯金があるだけで課税対象になるケースも
- 遺産総額が基礎控除を超えたら各種特例・控除を確認:配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例の適用で実際の税負担をゼロにできる場合も
- 申告期限は10ヶ月以内。不動産・非上場株式がある場合や遺産分割でもめている場合は早めに税理士へ相談を
まずは自分の家族構成で基礎控除額を計算し、遺産総額の概算と比較することから始めましょう。
相続税の計算は複雑に見えますが、基礎控除の仕組みを正しく理解することが、適切な相続対策への第一歩です。
不安な点や複雑なケースがある場合は、早めに税理士などの専門家に相談し、申告期限に余裕を持って対応することをおすすめします。


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